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東京地方裁判所 昭和48年(特わ)590号 判決

被告人

1

本店所在地 東京都練馬区中村北三丁目一一番五号

信用建設株式会社

(代表者代表取締役 渡辺茂元)

2

本籍 福島県郡山市中町四一番地

住居

東京都練馬区中村二丁目三一番一一号

職業

会社員

渡辺茂元

昭和五年一〇月五日生

被告事件

法人税法違反

出席検察官

河野博

主文

1  被告人信用建設株式会社を罰金七〇〇万円に

被告人渡辺茂元を罰金一五〇万円に

それぞれ処する。

2  被告人渡辺において右罰金を完納することができないときは、

一万円を一日に換算した期間、同被告を労役場に留置する。

理由

(罪となる事実)

被告人会社は、東京都練馬区中村北三丁目一一番五号を置き、不動産の売買・管理等を営業目的とする資本金三、八〇〇万円の株式会社であり、被告人は、右会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄していたものであるが、被告人は被告人会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空の仕入および経費を計上し、これに見合う架空の借入金を計上する等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四四年三月一日から同四五年二月二八日までの事業年度における被告人会社の実際所得が八七、二五二、〇五〇円あったのにかかわらず、昭和四五年四月三〇日東京都練馬区栄町二三番地所在の所轄練馬税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九、八五九、一四八円であり、これに対する法人税額が二、七三八、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度の正規の法人税額二九、八二六、一〇〇円と右申告税額との差額二七、〇八七、五〇〇円を免れたものである(別紙一、二)。

(証拠の標目)

(甲、乙は検察官の証拠請求の符号、押は当庁昭和四八年押一、三六九号のうちの符号。下段のかっこ内は立証事項で数字は別紙一の各勘定科目の番号。)

一  被告人の当公判廷における供述および検察官に対する供述調書(乙8)(全般)

一  登記官作成の各登記簿謄本(甲一の12)(全般)

一  次の者の検察官に対する各供述調書

1  細野森造(甲一5618)(全般、特に101112131415162324293341)

2  為定弘(甲一78)(全般)

3  福岡良吉(甲一10)(全般)

4  佐藤秀夫(甲一11)(全般)

5  柳原能(甲一1213)(全般)

6  山下義雄(甲一14)(全般)

一  福岡良吉に対する大蔵事務官の質問てん末書(甲一9)(全般)

一  大蔵事務官作成の次の書面

1  昭45/2期架空経費調査表(甲一15)(121516)

2  昭45/2規架空経費と社長借入金との関連表(甲一16)(121516)

3  領収証の確認について(甲一17)(121516)

4  現場別仕入売上調査書(甲一21)(23)

5  支払手数料調査書(甲一22)(42)

6  公表借入金調査書(甲一23)(47)

7  認定利息調査書(甲一24)(47)

8  認定利息の調査結果について(甲一25)(47)

一  練馬税務署長作成の次の証明書

1  昭和四七年八月一七日付(甲一19)(132366)

2  同年一一月二日付(甲一26)(66)

3  昭和四八年一月一〇日付(甲一27)(66)

一  押収してある次の証拠物

1  総勘定元帳一綴(押2)(全般)

2  法人税確定申告書一綴(押3)(全般)

3  仲介手数料等メモ一袋(押9)(全般)

(法令の適用)

被告人会社につき法人税法一五九条、一六四条一項。

被告人につき同法一五九条(罰金刑選択)、刑法一八条。

(量刑の事情)

本件について、被告人について懲役刑を選択すると、前科との関係で執行猶予を付することができない。そして本件犯行の手段、方法(架空仕入、架空経費の計上およびこれに伴う架空名義の請求書、領収証の作成、帳簿の改ざん等)が悪質であることを考えると、被告人に対し、懲役刑の実刑を科することも考えられないではない。しかし、執行猶予の障害となる前科は業務上過失傷害(交通事故)、道路交通法違反の罪に関するものであって、本件とはその罪質を全く異にするものであること、本件ほ脱税額は二七、〇八七、五〇〇円であって、この主事犯においては必ずしも高額なものとはいえないこと、本件脱漏所得額は七七、三九二、九〇二円であるが、そのうち被告人が現に脱漏を企図した金額は四八、五〇〇、〇〇〇円(架空仲介手数料一七、九三六、一二〇円、同材料仕入高一六、四六三、八八〇円、同土地造成費一四、一〇〇、〇〇〇円)(これを脱額にすると一六、九七五、〇〇〇円)にすぎなかったこと一六、九七五、〇〇〇円)にすぎなかったこと、本件脱税は一事業年度のみに関するものであって、その前後において被告人が脱税を図った形跡はないこと、本件脱税額はすでに完納されていること。被告人に反省の情が認められること等を考慮し、さらにこの種事案における当裁判所の量刑の実情を参酌すると、本件において、被告人に対し、懲役刑の実刑をもってのぞむことは酷にすぎるものと考えられるので、今回に限り罰金刑を選択することとした。

(裁判官 松本昭徳)

別紙一 修正損益計算書

信用建設株式会社

自 昭和44年3月1日

至 昭和45年2月28日

〈省略〉

〈省略〉

税額計算書

信用建設株式会社

事業年度 自 昭和44年3月1日

至 昭和45年2月28日

〈省略〉

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